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昨夜も今朝も探しましたがダメでした。見つかりません。へこむ…。

ゲームはまだ手つかずなのですが、ニーアのサントラ聴きました。音楽が好きです大好きです鳥肌立った…!

続きに種デスの小話置いておきます。アスシンです。無駄に長いです。誰が読むんだこのヤローって感じですが気にしません自己満足。自分を落ち着かせるための作業。
さて、今夜はザックラ書くぞー。

+ + + + + + + + + +
「前いいか、シン」
「…空いてるんだから、勝手に座ればいいでしょう」
一日の終わり。
食堂でコーヒーをちびちびとすすりながらぼうっとしていたら、ファイルを脇に抱えたあの人が…アスラン・ザラがやってきて、俺の前の席に腰を下ろしたのはついさっきのことだった。
彼も俺と同じように一服したいだけなのか、飲み物をだけを手にして席に着いた。
時間帯のせいもあるのか、俺と彼の他には室内に人影はなかった。

彼は当たり障りのない会話を何度か俺に振り、俺は本当に適当に返事をしていた。上官を上官とも思わぬ失礼な態度をとっていると自分でも分かっているのだが、彼を前にするとどうにもそういう風にしかできない。

しかし…なんなんだろう。
彼はいつもより、なぜだかじいっと俺の顔を見つめているような気がする。
なんか落ち着かない…ていうか何なんだ? なんか俺の顔についてるんだろうか?
彼に見られている…ということにどきどきする。
だって俺この人のこと…だから、仕方ないじゃんか。
自分でも信じたくないけれど、なんでとかわからないけれど、いつの間にか――。

「…ふふ」
え? 何? ちょ…、笑われた?
「な…なんですか…?」
今のは俺の顔見て笑ったってことだよな。
だから一体なんなんだっていうんだ?

彼は目元に優しげな笑い皺を刻む。
伸ばされた彼の手が俺の頬にふれた。
な、なに!?
突然の接触に俺は訳がわからず動揺する。
こんな風な彼との接触は初めてのことだ。
なんとなく甘い雰囲気が漂っていると言えなくもないような…そう感じるのは俺の願望が過ぎたせいかもしれないけれど。

でも本当にどうしたって言うんだろう…??
やばい。心臓ばくばく言ってる。もしかしたらじゃなくても俺の顔、今真っ赤かもしれない。

ていうか、俺とこの人って顔を合わせればいつも衝突してるような相性の悪さなのに(俺としては不本意なんだけど)今日はこの人気持ち悪いくらいニコニコしてるし変だ。何かいいことでもあって機嫌がよかったりするのだろうか。何にしても俺に笑顔を向けるなんてすごく珍しい。

彼の親指の指先が俺の唇の端をつついた。
「シン、口開いて」
「…は?」
口? 唐突になんだ?
「いいから、口」
彼の口調は優しげだが、どこか逆らうことを許さない響きがあって、俺は目を泳がせながらもおずおずと口を開ける。
彼は顔を近づけて俺の口の中をのぞき込むようにして見てから、また楽しげに笑った。
俺はもう何がなんだか分からない。――と思ってたら、…え? 彼の手が開いた俺の口に近づいて。

「……っ!?」

彼の人差し指が、俺の下の前歯の上をすうっと撫でた。それと同時に下唇に指が触れて、俺の背中にぞくぞくとしたふるえが走る。歯に触られたことよりも、彼の指が唇に残した感触のほうに、なぜか俺はうろたえた。

彼の、白くて長い指が、俺の唇に、ふれた。

なに? いったいこれは何だって言うんだ?

「ほら」
少し長めに伸ばした髪をかすかに揺らして、彼は笑いながら俺の目の前に自分の人差し指を掲げて見せる。
それは俺の唇に触れた指だ。
「な、なに…っ」
その指が…指が、ゆび…。
「さっきからずっと気になってた」
「え…、えぇ…?」
気になってたってなにが!?
「ついてるだろ」
そう言って、彼は俺の目の前に指をさらに近づける。
彼の軍人らしからぬ白くなめらかな指先を注意深く見つめると、……あれ? 何か小さい緑っぽい欠片みたいなものがついてる…?
「口を開く度にちらちら歯の上についたシミが見えて、気になって仕方がなかったんだ。昼に何を食べたんだ、きみは」
昼…。今日一日を思い返す。
ほぼ一日中MSデッキに居座って愛機の整備をしていた。先の出撃時にインパルスの機体の反応速度と自分の操作との間に若干の感覚的なズレを感じたので、それを修正したくてモビルスーツのOSの書き換えを行ったのだ。プログラムの書き換えなんかでそんなに時間がかかるとは思っていなかったのだが、予想以上に手間取った。
やることが次から次へと出てきて、再試行の連続、ゆっくり食事を取る時間もなかった。
合間に友人の整備士の一人が差し入れてくれたファストフードを片手間のように腹におさめ……ああ、じゃあこれはそれの上にかかっていたパセリか。
かれこれ数時間前の食事だ。ということはあれからずっと歯に緑の破片をくっつけたまま、俺は…。

「そ、そういうのは、気がついたんなら笑ってないでもっと早く教えてくださいよっ」
いたたまれない。
だからさっきから彼は俺のことをずっと見ていたのか。やっぱり相変わらず性格が悪い。
俺はてっきり…いやいや、てっきりって何だよ―――クソ、恥ずかしいなぁ、もう。

おそらくこちらの内心のあれやこれに全く気がついていないだろう彼は(頭は凄くいいのに、他人の気持ちには呆れるほど超にぶいし)、机の上で頬杖をついてまだにこにこと笑っている。
「いや、かわいかったもんだから」
「はあ!?」
かわいい?? 何が? 誰が? もしかして俺が!?
「そういうおまえのヌケてるところ、見れてなんだか嬉しいなと思って。かわいいと思うよ。それぐらいが丁度いいんじゃないか」
「丁度いいって何にだよ!? ばかにしてんのか!?」
同じ言語を喋る人間と話をしているとは思えないほど、全然彼の言っていることの意味が分からない。
眉を寄せる俺を前にしても、彼はのほほんと笑っている。
…ていうか俺、目上の人に思い切り遠慮なく怒鳴ってるよ…。
「馬鹿になんてしてないよ。年相応に見えるって意味で…いつも肩肘張って背伸びして、無理ばかりしてるきみを知っているから――まあ、それは俺も含めて、きみの周りにいる大人のせいかもしれないけれど」
大人って…。
「な、なんだよそれ。年って…俺あなたとふたつしか年違いませんけど、それで大人ぶるんですか…っ」
「そうやっていちいちつっかかるところが子供――」
この人、何を言えば俺が怒るかわかってて、あえてそういう言葉を選んでそれを言ってるんじゃないだろうか。
年なんて絶対どうやったって差は縮まらない。当然俺はいつまでたってもこの人にとっては年下で、この先もずっと子供扱いされ続けるようなそんな気がする。面白くない。
この人は俺の上官で、だけどそれだけじゃない、もっと対等でいたいのに。

彼の腕が再び俺に伸ばされて、頬に触れた。
今度は何だというのだ。
ふてくされながら、俺は顎を引いて彼を睨んだ。

彼の手のひらがまるで愛しいものを慈しむかのように優しく俺の頬を撫でる。いや、これが好意のこもった動作だなんて思うのは馬鹿げている。だって、この人は。

「ああ…」
彼が俺の顔を見ながら微かに目を見開いて数度瞬きをすると、また柔らかくほほえむ。
優しげな容貌に上品な笑みを乗せたそんな表情だって、何か裏があるんじゃないかって思うくらいには、俺はひねくれている。素直に他人の気持ちを受けいれられないのは性分だ。十分自覚はあるし、そんな自分に辟易することもあるけれど、こればかりは仕方がない。

「こんなところにもついているぞ」

え、まだ他にもパセリついてんの、嘘、マジで?
ふんわりとほほえんで彼の顔がゆっくりと俺に近づいて。
また彼の腕が伸ばされて、さっきと同じように彼のその指先で拭われるのかと条件反射のように俺は薄く口を開いたのだが――。

「…?」

なんでかさっきよりも彼の顔が近づいて。
どんな奥まで人の口の中を覗くつもりだよとちょっと首を傾げたが、目の焦点が合わないくらいすぐ目の前で彼の前髪が揺れて。

唇の端にふにゃりと柔らかい感触。
それは指の感触ではなく。
自分のものではない温かい吐息が一瞬だけ頬にかかって。

何をされたのか…というか、自分の身に何が起こったのか、とっさには理解できなかった。

だって、そんなのって。

まさか、だ。


「……!?」


今 触れたのは 彼の 唇 ?


「ん…、ソースのにおいか…?」
思考が追いつかない。
目を白黒させている俺の前で、彼はけろりとした表情でぺろりと自分の唇を舐める。ちらりと唇の間から見えた舌がやけに赤く見えて、なんだかその動きがいやらしく見える…のは俺の頭がぐるぐるしているせいだ、きっと。

「ごちそうさま」

彼はにっこり笑ってぽんぽん叩くように俺の頭を撫でる。まるで子供にするように。

ぺろりって。

俺の口の端についていたパセリが、この人の口の中に?

なんで?

い…意味が分からない。

まるで意味が分からない!

なんでそんなもん舐めて取る必要があるって言うんだ。
これは新たな嫌がらせなのか!?
そうか、いつもいちいち刃向かう俺のことが気に入らないから嫌がらせされたのか!?
だったら成功だよ隊長。
俺は凄くパニクって精神的ダメージは甚大だ…!!!

「ああああああ、あんた…っ」

体温は急上昇。
でも原因は何も怒りだけじゃないのが本当にいたたまれない。バカヤローだ。

でも仕方がない。
俺がこんなにも彼の一挙一動に浮いたり沈んだりいちいち振り回されるのは――。
お医者様でも草津の湯でも直せないとかいう、アレのせいだ。
認めたくはないが、そんなありがたくもない病にかかり、囚われてしまっているからだ。

この、馬鹿がつくくらい天然な俺の上官は、俺の気持ちなんてちっとも気がついていないに違いない。

…いや、もしかしたら俺の気持ちを知っていて、彼が人をからかうようなことを仕掛けてきているのだとしたら?
そんな風にも考えられなくもない。そういう事情での嫌がらせだというのならそうかもしれない。
天然だが意地の悪いところもあるこの人のことだ。根本的な部分は絶対サドだと思うのだ。なんとなくそう思う。
けれど、人の気持ちを試したり、そんな風に駆け引きをするような人でもないような気もするし…。
どうなんだろう。考えれば考えるほど分からなくなる。
おまけにいつも以上にグルグルして、思考力低下が甚だしい俺の頭では、現状を冷静に判断することなんて出来なくなっている。

「おまえ、やっぱりかわいいよ」
席を立ちながら彼が言う。
かわいいなんて…やっぱり馬鹿にしてる。男がかわいいなんて言われて喜ぶと思ってんのか。
でも、彼に言われたのなら、俺にとってそれは別の意味も持つ言葉になる。
…駄目すぎる、俺。
照れ隠しに彼を睨んで頬を膨らませた。それしかできなかった。



彼にもし気持ちを伝えたらどんな顔をするのだろう。
少しは意趣返しになるのかな、なんて頭の隅で考える。
想像するのは楽しかったが、その直後に彼がどう返答するのかは考えずとも分かる。決まっている。
俺の想いは彼には不要、迷惑。
そして用意されるのは、彼の口から出るのは、俺にとっては全然楽しくない答えだ。
だから言わない。
絶対に言うもんか。


食堂を出ていく彼の背中をむくれながら俺は見送り、中身を飲み干した紙コップをくしゃりと片手で潰してから自分も腰を上げた。
今夜はもう寝るだけだ。
夢見が悪いかもしれない…そんな予感がした。




*





本当は唇には何もついていなかった。
触れたくなったんだ。我慢できなかった。
きみの赤くなった頬がすごくかわいくて、つい、なんて言ったら。
きみはまた怒るんだろうな。

けれど、そんな怒った顔にも俺はまたかわいいって思うんだ。

ああ、取り繕えない末期症状。
俺が自分のために平気で嘘をつける人間だって、きみはまだ知らない。

気づいているか?
俺は興味のない人間にはとことん冷たい人間だということを。
そんな俺がこんなにもきみに構うのはどうしてだと思う?


きみはこんな俺の気持ちを知ったら、きっと嘲うんだろう。








でも――シン。覚えておけ。
最後に笑うのは、この俺だよ?





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